2015年11月30日月曜日

道具の始原

原 研哉:棍棒というものが人間の手にした最初の道具だと言われます。しかし、道具の始原はもうひとつある。空いた手で棍棒を持つのは自然だけど、たとえば川に行けば、二つの手を合わせて水をすくったり飲んだはずです。それが器の始原。器という道具の原点、原型です。だから、「棍棒」と「器」。道具の始原は二つあると思うんです。(略)
人間の身体は道具の進化を通じて繊細にもパワフルにも拡張する、と。だから棍棒は弓矢になったり、剣になったり、パワーショベルになったり、あるいはミサイルになったり、道具は環境を変容する力を得て拡張されていくのですが、そこには二系統あって、ひとつは世界を加工変容していくための「棍棒系」の進化、もうひとつは、ものや知恵を保持していくための「器系」の進化。この二つを対にして考えることが、大事だと思うんです。
阿部雅世 対談 原研哉「なぜデザインなのか。」

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