2015年11月30日月曜日

オランダの近代化から



原:今の世界はテクノロジー・ドリヴン、つまりテクノロジーがここ三〇年くらい世界をドライヴしてきていると思うんです。その流れにぴったり合っているヨーロッパの国がオランダではないかと。その象徴的な存在であるレム・コールハースという建築家が、まさに速度と密度とラディカリズムの申し子として、世界の建築をどんどん煽っているように見えます。

阿部:九州ほどの大きさの国土しか持たずして、世界一の海上帝国を築いた人々の末裔ですからね、国外で大きな仕事をするということに対して、オランダほどポジティヴで、長けている国はないかもしれません。

原:オランダ人は国土を自分たちでつくっています。「世界は神がつくったけど、オランダはオランダ人がつくった」と言われていて(笑)、埋め立てて土地をつくっているし、運河なんかも計画的にコンパスで計ったようにきっちりと建設している。森も自分たちでつくったり、風車を回してエネルギーをつくる。チューリップの球根は、ものすごい投機的な価値を持つぐらいに、一時ブームとして盛り上がったそうですが、品種改良という自然の改変もためらいなくどんどん自分たちでやっちゃうし、ビールもつくると。とにかくあらゆるものを、オランダ人は自分たちでつくり出してきたわけです。
(略)


原:オランダのデザインの歴史というのは、ひと言で言うと急進的。二 〇世紀の初頭にオランダで起こった「デ・スティル」という造形運動は、ヨーロッパのモダニズムムーブメントの中で最も徹底的に原理主義的なものを求めましたが、これが現代まで続くオランダのモダニズムの伝統になっている。ラディカルで、急進的で、原理を敷衍する意志が強く激しくて。
(略)

阿部:人工的につくった土地をどうコントロールしていくかというのが、オランダ人にとってのエコロジーなのだと思います。日本みたいに、最初から土地があって、山や谷もあって、水を撒かなくても植物が生えてくる国のエコロジーとは、やっぱり違いますよね。オランダは、ある意味究極の「近代国家」。そのメンタリティは相当独特のものがありますよ。
(略)

原:そういう国だから、いまのテクノロジー・ドリヴンという潮流にすごく適応しているのだと思います。テクノロジーを疑わないという姿勢と、埋め立て地に国をつくってしまうという発想が噛み合っているので、そこから勢いのある建築やデザインが出てきている。ヨーロッパは、ドイツやイタリアも少しおとなしくなってきていて、オランダの動きが激しいなというふうに日本からは見えます。

阿部:ただ日本が知っているオランダのデザインの動きというのは、それもやはり人工的につくられた情報に乗っていると思います。それはもう国策として世界中にプロモートして、各国の一流美術館で展覧会をやってという、非常に戦略的なプロモーション力で、「オランダのデザインが面白い」という情報を広めてきたわけです。


「なぜデザインなのか。 」:原 研哉/阿部 雅世

※友人から、ヨーロッパでは今もオランダの勢いが非常に強いという話を聞いていたので、この本は2007年に出版されたものだが、今も続いている状況なのかもなと思った。

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